マカデミアンナッツチョコレート

タグ: 状態変化 物品化 食品化 手違い 食べられる | 2013年1月22日 02:57 | Pixivで見る
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航空券失くした、どうしよう…… そうだ! おみやげに変身して修学旅行生の手荷物に紛れれば...

「うっそ。チケット予約証無いじゃん!」

沖縄の空港で私は途方に暮れていた。

ハンドバッグの中に入れてあったハズの航空券予約証が見つからない。むろん、予約ナンバーなんて覚えていない。有効な身分証明証とかも持ってないし、どうすれば。。。

今から航空券を買い直すだなんてもったいないというかそんなお金ないし、かと言って沖縄に居続けても宿代がかさむし、どうしよう……

蒸し暑い空港でひんやりとした金属のベンチに座って私は頭を抱える。数日間、常夏で遊びまわったせいで身体は疲労の限界だ。早朝の安い飛行機にしたために、昨晩の睡眠時間は短い。
そうしたとき、ふと修学旅行生っぽい女生徒の集団が目に入った。

 *

やった!!

飛行機の座席の足元で、私は人知れず喜んでいた。
ある生徒がトイレに入る際に置いた土産物袋に、中にあったお土産物に変身して私は侵入したのだ。沖縄の有名なおみやげ、マカデミアンナッツチョコレートの菓子箱に変身した私は、そのまま誰にも気付かれることなく、搭乗する予定だった飛行機の中に運び込まれた。

「ご搭乗機、これより離陸いたします。お席のベルトをしっかりとお閉め下さい。」

 *

「ね~、どんなおみやげ買った? 見せて~。」

私は足元のバッグから女子生徒のひざ元へ出されていた。このまま着陸までゆっくり休んで、元に戻る体力を回復しようとしていたのに予想外の展開だ。
変身したパッケージに変なところはないかな。よもや見破られてしまいはしないか。緊張する。

「あれ? チョコレート一箱多い……」
「えっ マジ? ウケる~」
「う~ん。」

ウッ マズい……。
少女は指折り 配る相手先を数え、もう一度バッグの中を覗き込む。
お願い、気付かないで……

「…やっぱり1つ多いみたい。どんな味か気になるし、食べちゃおっか。」

 *

突然のことに驚いた私は、すぐさま人間の姿に戻ろうとした。いきなり膝の上に人間が現れたら驚くだろうが、緊急事態だ。
…しかし、私は元の姿に戻ることができなかった。ここ数日の体力消耗と寝不足が祟ったのだ。

(やめて! 私は人間よ! 食べないで!!)
少女たちはよもやマカデミアンナッツチョコレートが人間だとは思いもせずに、パッケージのフィルムを剥がしていく。ピリピリピリ。私は手も足も出ない。
フィルムは全て剥がされ、備え付けのエチケット袋にくしゃくしゃに丸めて捨てられる。私は丸裸になった。

「すご~い。」
「美味しそうな匂い……」
「どれどれ。うわ、すっごくいい匂い。」

箱が開けられて感想を言われる。あまりの事態に、私はひどく動揺していた。

「あれっ このチョコレート、ぷるぷる震えてるように見えたけど。」
「飛行機の振動でしょ。」

そう言いながら少女は箱に並べられたチョコレートに手を伸ばす。一つ、箱からチョコレートを取り出すと、自然な動作で口へ運ぶ。
(ダメ! やめて!! 私、チョコレートなんかじゃない! お願い気付いて…!)

パクッ、モグモグモグ……
(ああっ あっ ひゃああああああ!!!!)

「わっ、美味しい~。こんなおいしいチョコレート、私初めてー;_;」
とろけていく快感に身を貫かれながら、私は私の味の感想を聞いた。
瞬間、『お菓子として開封されて実際に食べられていっている』という事実が現実として私に迫って来て、深い恐怖を覚えた。

 *

(…あっ あっ ダメ、もうダメ、ああっ ……ハァハァ あああ!!)

「ホント美味しいね。チョコレートは口の中でフワッと融けて、ナッツは香ばしくて歯ごたえがあって。」
「まさかこんなにレベルが高いとは。沖縄の土産、あなどれん。」
「口当たりもやさしいし、あとなんだかお花みたいな香りもほのかにする……」

少女は口々におみやげのチョコレートの感想を言い合う。
私は身体の部分部分を噛み砕かれながら、全てが咀嚼され粉々に噛み砕かれ融かされて唾液と混じり合う快感に囚われていた。

 *

「最後一つになっちゃった。」
「私、もーらいっと!」
「あっ! ズルい~」

最後のひと粒を少女がつまむ。あるのはただただ絶望。
これが食べられてしまえば、私はもう終わりだ。e-チケット控えを失くしたせいで、マカデミアンナッツチョコとして通りがかりの修学旅行生に食べられて、終わり。

(……ゆるして、お願い。私、人間なのに… チョコレートじゃないよ…… お願い食べないで……)
「あ~ん」
モグモグモグモグ……

(ヤダァ! やだやだやだ…! ひゃ! んんっ ぁぁあああああ!!!)
(…私、人間なのに! ダメ! ああああああああ!!!!)
咀嚼は続く。

カリッ マカデミアンナッツも噛み砕かれた。
(んっ あふぅ、くふぅ。はぅ! ああああ!!)
モグモグモグ……

…モグモグ、ゴックン。

私は完全に噛み砕かれて、口の中でとろけて消滅する。
後には、エチケット袋の中に捨てられたフィルムと箱だけが残された。

「おいしかったねー。こんなに美味しいのなら、もう一箱買ってきたらよかった。」

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