黄金像リース

タグ: R-18G 状態変化 物品化 固め 手違い 売られる 捨てられる | 2012年10月15日 04:08 | Pixivで見る
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価値を、美術品存在全体ではなくて、その構成要素である材質だけに偏重したりするのは危険だという話

「形質変化後のことですが、昼間は美術品としてリースさせていただきます。なお、彫像になっても意識は保ったままですので、夜間は資格取得講座ビデオでキャリア育成を、息抜きとして最新の映画やドラマなども鑑賞して頂きます。」

まったく、経済は縮小の一途をたどっている。労働市場も縮小を経験しており、卒業後就職にありつくことは難しかった。
私は自らのプロポーションに自信があった。実際、在学中はファッション誌の読者モデルとしていくらか小遣いを稼いでいたものだ。しかし、プロモデルとしてやっていくのは相当に難しい。そうして就職先を探しているときに、この求人が目に止まったのだった。『プロモーションに自信のある方大募集! 数十年間時間を止めて就職難を乗り越えませんか? キャリア育成も同時に出来ます!』

会社の説明としてはこうだった。
最貧国がテイクオフをし始める20年後には労働市場の需要不足も解決しているだろう。むしろ、人的資本を十分に蓄積した労働者の供給不足が予測されているらしい。ここで、現在職にあぶれている女性を彫像――黄金像、銅像、ブロンズ像、石像、宝石像――に変化させ、その20年後にもとに戻すというシナリオだった。形質変化中も意識は途切れることなく続くため、この間に資格試験の勉強もできるということ。また、美術品としてリースをされることによって、不労所得さえ稼げるという内容だった。

「なお、形質変化する際の材質ですが、身体の体積と同じ体積のそれが必要になってきますため、それぞれお値段が違います。体積分の額面の債権を当社に預けていただくという形になります。契約期間終了の際には、また同じ体積の材質をその時の時価で払い戻しをさせて頂きます。金利と材質価格の長期動向予測、そしてリース時の手取り予定はお手元のハンドアウトをご覧ください。。。」

うーん。黄金像になる価格がずば抜けて高い。でも、一番価格が安定してるよなぁ。下手に恣意的に価格の決まってるダイアモンドなんかを選んで、元に戻った時にはダイアモンドの価格が下落してて借金まみれなんてのはイヤだし。ここは素直に黄金像なのかなぁ。。。

契約はわりと簡単だった。書類上は長期雇用という形態らしい。次に動くときに金価格が下落してなきゃいいけど。

「はい、中へ入ってください」
ガラス戸が閉まり、指示された通りの体勢になって、変換の時を待つ。
「開始」
突如、頭の先と足の先に鋭い冷たい感覚を受ける。金化が始まったのだ。
(うん。大丈夫……。これで資格も取れて未来の世界で就職もできて、人生バラ色……)
「終了です。お疲れ様でしたー。」
カプセルの中から職員達に抱えられて運び出される。そうして、他の黄金像の隣に並べて立てかけられた。
(うーん、そうか。黄金像だから服はないのか。でも、何も着てないのに寒くなくて変な感じ。。。)

それから、美術館で昼は展示され夜はビデオ鑑賞をする日々が始まった。
美術館の一角で白熱灯の光を浴び、美しく引き締まった身体を入場客に晒す。まったく、造形は人間を元にしているのだから、現実的に現実主義の黄金像であった。
(あっ あの男の人、鼻の下を伸ばしてる。こういう人って、わりと長い時間眺めてくるのよねぇ。)

そうした生活を送っていたある日のこと。この日は様子が違っていた。電灯が点いているのに入場客が来ない。
やがて、昼間になると作業着を身にまとった運送会社風のスタッフがぞろぞろと美術館の中に入ってきたのだった。
「この黄金像とかをリースしてた会社、倒産したんだって?」
「海外投資失敗したんだって、こわいなぁ。さぁ仕事仕事。」
(ええっ 倒産しちゃったの?! まだ5年しか経ってないのに、就職できるのかしら)
運送業者に黄金像の疑問など伝わるはずもなく、彼らは仕事を進めていく。
そういってスタッフは私の身体を無遠慮に掴むと、いっせーのでで布の敷かれた木箱の中に移し替えた。上からも布が被せられ、蓋が閉められる。そのあとは台車でガラガラと運びだされ、トラックに載せられたようだった。

また台車に移し替えられガラガラと運ばれる。蓋を開けられたそこは、大きな体育館のようなホールだった。運送業者のスタッフは忙しく働き回っていた。
てっきり、材質変化をしてもらった実験所へ運ばれるものだと思っていた私は疑問を抱く。
(何をするつもりなの……)

やがて、運送業者の掃いた後には、小金を持ってそうな身なりの良いオジサンなどがホールに現れ出した。
ガヤガヤと世間話の響く中、ホール内にマイクが響く。
「はい。ええと、基本的に材質自体に価値の少ない宝石やその他はこのあとオークションを行ないます。黄金像については基本的にこちらで処分しますが、もしお気に入りのものがあればお近くのスタッフまでお声をお掛けください。では、じっくりご賞味くださいませ。」
(ええっ! 私、売り物なの?? それに処分ってなに??! 私は黄金像じゃない! 人間の女の子よ!)
予想外の事態に頭が混乱する。そうしている間に、客は私の身体を触ってきた。
(ひゃう…!)
展示されている間には触られるという経験がなかったため、どうしても身体が敏感に反応してしまう。
「はぁぁ。こんなに美しい形をしてるのに、鋳潰してしまうのはもったいないですなぁ。」
「まぁ、この重さの金だと相当な価格ですし。仕方ないでしょう。」
太もも、ヘソ、頬を手持ち無沙汰にさすりながら、客が会話をしている。
(ふぁぁあ!! ぅ…ひぐぅ、ぐすぅ…私、人間の女の子なのに……鋳潰されたくないよ……)
私は動くことも逃げることもできずに、ただただ悶えるしかなかった。

「では、像の方を回収いたします。引き続きオークションを行いますので、前方に用意しましたお席の方へお掛けください。」
私はホール裏へ回収された。結局買われることがなかったが故に、他の雑多な黄金像とともに隅へ集められる。
(ああ、変化させられたときに先に壁へ立てかけられていた人が居る。この人も回収されちゃったんだ。。。)
(こんなことになるんだったら、サファイアとか宝石にしておけばよかった…… オークションで捌かれるんだったら一緒か……)

「じゃあ、黄金像はこのコンテナの方へお願いします。壊れてもいいんで、できるだけ詰めて入れてください。」
作業スタッフのボスがスピーカーで指示を出す。
(違うっ私は黄金像じゃない!!人間の女の子よ!!!)
なおも私はそう叫び続けるが、スタッフには届かない。そして、私はフォークリフトに載せられてコンテナの中に運び込まれる。
(やっやめてぇ!!)
しかし、必死の訴えも届かず
ガキン ガキガキン ガガガギキィィイイイ!!!
リフトで他の黄金像とともに無残にも押し込まれ、コンテナの真っ暗な闇に沈んだのであった。

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