コンビニおでん

タグ: 状態変化 食品化 縮小娘 小女子 売られる 食べられる 手違い | 2013年8月22日 03:02 | Pixivで見る
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コンビニのおでんに混じって出汁の中で疲れを取っていた女の子は他の具と一緒に売られてしまうが……。  最近食品化のSS増えてきましたね。エロうれしいです。

「ああ~~疲れが取れる~~~。」

鰹と昆布の合わせ出汁の中で私は脚と腕を目一杯伸ばす。横で一緒に煮えてる、味のしゅんだ大根の輪切りにこぶしが突き刺さった。柔らかくて美味しそうだ。
コンビニのエプロンを付けた友人はレジ裏のタバコの棚を補充しつつ私の方を見る。

「どう? 気持ち良い?」
「あ~、やっぱさいこ~~。」

ぶくぶくと口を沈めつつ私は答えた。

 *

友人はコンビニバイトを深夜を中心に入っている。この時間は毎週一人しかシフトが入っておらず、かつお客さんもほとんど来ないので暇らしい。
そこに目をつけたのが私。私は昼夜逆転勢なので夜中も目がさえてることが多いんだけど、どうせ夜中に自分の部屋で起きていてもネットぐらいしかやることがない。それなら、コンビニへ来て友達と雑談しつつ夜を更かす方が楽しい。エアコン効いてて電気代節約にもなるし。

さて、私は自由に自分の身体を縮めることが出来て、かつそばにある物に変身することもできる。小さくなってお腹いっぱいケーキを食べたりだとか、夏場に自分の家の冷蔵庫でプリンになって涼を取ったりだとか、いろいろ便利。ここんとこ寒さの厳しい数週間は、コンビニへ行って手のひらサイズに小さく縮んで、レジで煮えてるおでんの中で暖を取るのが癖になっていた。大きなお風呂に入りながら友だちとゆっくり話す。具材から滲み出る油で身体がヌメヌメになって、お肌にも良さそうだった。

“おでんの中に浸かってみたい!”と最初提案をしたときは、友人は変な顔をしていた。でも、自分が食べるわけでもないし、迷惑をかけないという条件付きでオッケーもらった。まぁ、女の子で取った出汁のおでんを食べられるんだからお客さんは幸せものだ。おしっこだってしちゃうもんね。ショワワーー

「(ブルッ) お金出しても手に入らないぐらいのもので煮込んでるんだから、感謝して欲しいぐらいだわ。」
「ん、なに?」
「なんでもないよ。」
「売りもんなんだから汚いことしないでね。あんまりひどいと売っちゃうよ?」
「あはは。」

このように、現実を引き付けつつも遠ざけるといった記号の作用によって、我々は記号に保護されて現実を否定しながら暮らしている。これこそまさに奇跡的な安全というものだ。“おしっこ入りのコンビニおでん”・“おでんとして売られる女の子”・“コンビニの冷蔵庫に入って損害賠償請求をされるバイト”そして“テレビに映る迫撃弾で破壊された町並み”。世界についての様々なイメージを目にする時の、つかの間の現実への侵入と、その場に居合わせないで済んだという深い喜びとを、誰が区別したりするだろうか。イメージ・記号・メッセージ。我々が消費するこれらの全ては現実世界との距離によって封印された我々の平穏であり、この平穏は現実の暴力的な暗示によって危険にさらされているどころかあやされているほどだ。

 *

「うわっ ヤバ! 店長来ちゃった!!」
「えっ。」
「やばいやばい。早く隠れて!」

普段は深夜に来ない店長が突然姿を現したらしい。私はビックリして煮玉子の影に身を潜める。友達はレジ裏に脱ぎ散らかしてあった私の服をかき集めると、ヤード裏へ急いで隠しに行った。

友人は店長から幾つか指示を受ける。ドリンクコーナーの在庫補充を二人でするらしい。服を持って行かれたあとに残った裸の自分を見て、私はこれからどう戻ろうかと思案する。んー。

そのとき、店の自動ドアが開いた。

 *

「うう~。寒い寒い。えっと、タバコの22番。」

この時間にお客さんが入ってくるのはしさしぶりだ。まったく、今日は偶然の重なることが多い日であることだ。レジ上の私はいつもどおり具材に変身してお客をやり過ごす。変身したのは横で煮えていたまん丸で味のよく染みた煮玉子だ。そのとき、店長がおでん桶の温度計に目をやった。

「(あれ。冷めてるなぁ)」

チッチッチッチッ…… 店長はおでんの火を強める。

「(……! やめて、ああ! あああ熱い!!)」

おでんの出汁はブクブクと泡立ち、プ~ンといい匂いをレジ前に広げた。鰹と昆布の香りの中には私の匂いも混じっているだろう。

「合計で569円になります。」
「あっ ちょっと待って下さい。ええと、おでんももらおうかな。」

 *

「何にしますか。」

店長は備え付けのトングを取り出して私の頭上にかざす。突然のことに私は更に危機感を強めた。

「えっと、じゃあ。大根と……、ちくわと……、あと卵を。一つづつで。」
「はい。」

ひょい、ひょい、ひょいとトングが具材を取っていく。その最後に私の身体が掴まれた。

「(まって! 売らないで!! 私は煮玉子じゃない! 売っちゃダメ……!!)」

私の声をよそに店長はおでんのカップの中に煮汁を少し入れ、透明な蓋をする。
…ちくわは85円。煮玉子は120円。

「計853円になります。お箸もつけときますね。」
「(出して! ダメ! 元に戻して!!!)」
「これで。」
「1053円からお預かりします。200円のお返しです。」
「どうも。」
「ありがとうございましたー。」

 *

こうなったらおでんの蓋が開けられた瞬間に飛び出して、「こぼしてしまった!」をするしか無い。ビニール袋に容器ごと入れられた私は脱出計画を立てる。容器が揺れて、煮玉子の身体がチクワや大根にあたってプルリと震えた。

が、不意に容器が出されて客の顔が大写しになった。

「(しまった! 即買い即食べの客だったんだ!!)」

心の準備ができていない私は煮玉子の身体のまま容器の底で滑ることしかできない。
足を取られて(足はないけど)混乱する私に、割り箸が迫る……。

「(いや…… やめて!!)」

……ブズリ!

割り箸は私の身体の弾力のある白身に突き刺さり、一気に黄身まで達した。

「(んぁぁあああああ!!!)」

横っ腹をぶっ刺されたような痛みと自分の奥まで異物が侵入してきた気持ち悪さに身体がプルプルと震える。

しかし、箸は無慈悲にも私を今まさに私を食べようとしている人の口元まで運ぶ。熱く火照った私の身体を冷ますよう、フーフーと息が吹きかけられた。

「フーフー。」
「(お願い……。食べないで… 助けて…。)」

卵がずれ落ちないよう、箸はより強く私の身体を外から内から鷲掴みにする。身体によく染み込んだ出汁と私自身から出るツユが箸が水滴を作り、ポトポトと容器へしたり落ちた。

(ギュウウ…)
「(あっ…ああっ……。)」

吹きかけられる息と外気温によって口内へ入れられても良い温度まですみやかに冷却された私の身体は、ついに赤黒い、湿った洞窟へとねじ込まれる。

「(いやあああああああ!!)」
「ハフッ、モグ。」
「(あっ!! あああっ…ダメ!)」
「モグモグモグ…。」
「(あああ△□%&#$*!!!)」
「う~ん。…なんだか甘くて味が濃いなぁ。味もよく染みてる。」

プリっとした白身が前歯で引き剥がされて、柔らかい黄身と一緒に噛み砕かれる。分断された身体の破片は唾液と混じりあって奥歯へ運ばれ、そうしてもう一度細かく砕かれる。小さくすり潰された煮玉子は舌に味の刺激を与えつつ、口内を乱舞する。…そして、ゆっくりと喉の奥へ流れていった。

……。

 *

店長が帰ったあと、バイトの子はおでんの火が強められているのに気付き慌てて火を消した。トングで具をかき混ぜながら、友人の名を呼び彼女の姿を探す。

「……お~い。大丈夫…? まだ身体が熱くなってるから、人間の姿に戻ったらやけどしちゃうのかな。反応してくれたら外へ出して冷ますよ?」

おでんの具たちは何も語らない。もう見つからない友人の姿を探しながら、コンビニの夜は更けていった。。。

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